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【制作実績】コンセプト立案からビジュアルまで:奈良県十津川村瀞峡観光ツーリズム

制作実績のご紹介です。
奈良県十津川村の瀞峡の観光ツアーサイトを和歌山県のヒトノハ社と共同で制作しました。
観光を目的としたサイトの事例はこれで2つ目。
今回はツアーをはじめとするコンセプト設計からクリエイティブ制作までをワンストップで担当させていただきました。
奈良県十津川村瀞峡観光ツーリズム
https://dorokyo.info/
瀞峡は奈良・和歌山・三重の三県境にまたがる渓谷で、昔は吉野から木材を海へ運ぶための運河として使用されていた歴史があります。
一時はベビーブーム世代の新婚旅行で賑わっていましたが、ここ最近めっきり客足も減り、過疎化も進んでいます。
そこで瀞峡ビジョンデザイン協議会は人を呼び込むツアーを企画。
ARUTEGAはヒトノハと協力して、ツアーのコンセプトワークをはじめとする、クリエイティブ制作を担当。
アートディレクションを行い、STUDIOでインタラクティブなサイトを制作しました。瀞峡で録った音が出るので、現地のせせらぎの音をいっぱい感じてもらいたいです。
瀞峡ツアーのコンセプトと設計
コンセプト
コンセプト、つまり言葉のデザインについて。
最初にとても力を入れた部分で、言語化することからビジュアル表現へと展開していきます。
今回のツアーの立て付けは、『知的好奇心が強く、普段から調べ物をして研究熱心な方々』に満足していただけるツアーを目指しています。
『瀞峡を中心にツアーの概念を作り上げていきたい』
そんな想いでチーム全体が対話を続けていきます。
このサイトは単なる完成品ではなく、新しい始まりの一つとして位置づけています。
観光に携わる方々、特にガイドの方々が、どのようにツーリストと向き合い、どのようなサービスを提供していくかという、根本的なガイドラインとなることを目指して制作にあたりました。
主要要素
コンセプトを制作にするにあたって、大きく分けて3つの要素(階層)があります:
- 体験概念
- プロジェクト名
- コピーライティング
プロジェクト名とコピーライティングが今回のウェブサイトにおけるコア部分。
体験概念はより大きな枠組みで、ツアー全体のブランディングの背景となる重要な要素です。
体験概念:タイムレス・ビーング
体験概念については、『時代を超えた状態』という考えから、『Timeless-Being』と名付けました。
Timeless-BeingとはWell-Beingの概念から着想を得ており、Timelessとは、永久に残り続ける美しさを表現しています。
現代社会では、単なる成長よりも、むしろ『脱成長』や『リトリート』、つまり自分の人生そのものと向き合う時間を作ることが重視されています。
これは特に欧米で顕著な傾向。
一人一人が人間らしい生き方を追求する、いわゆる脱資本主義的な文脈で、Well-Beingという言葉が活発に使われます。
今回はこの旅を通じて、訪れる方々が自分との対話のきっかけを見つけてもらいたいと考えました。
知的好奇心の高い人たちは、こういった人間本来の生き方に敏感だからです。
瀞峡は時代を超えた存在であり、そこでは過去と現在を行き来するような感覚が味わえる。
そうして、大自然や今に残る瀞ホテルなども含めて、時の厚みを感じられる旅にしたい。
プロジェクト名とキャッチコピー
プロジェクト名については『瀞』(toro)に決定しました。
この一文字で全てを表現できるなと。
清々しく静かで浄化されるという意味を持ち、まさにこのプロジェクトのために存在するような漢字です。
外国人の方にとって、この見慣れない漢字自体が一つの模様のように映るかもしれません。
私たちが他言語の文字を見たときの印象に近いものがあるでしょう。
そういったところから、これ一つでシンボルになり得ると考えました。
そして、キャッチコピーは『時の深遠を旅する』
時間を超えた幽玄な場所で、気が遠くなるほどの深い歴史を味わってもらえればと考えました。
デザインの目的と方針
サイトの目的について
- 国内外の知的好奇心の高いツーリストをターゲットに、瀞峡ツアーの予約につなげること
- 熊野のさらに奥に位置する瀞峡という場所の独自の価値を伝え、この場所に行く意義を感じてもらう
- サイトから外部の旅行代理店サイトに移動して予約する
- 今後、瀞峡を軸とした複数のツアーを展開予定という前提での構成
ツアーの価値提案
サイトで伝えたいツアーの価値を3つ定義しました。
- 文化体験:ガイドによる歴史的・文化的なレクチャーを通じて、瀞峡への理解を深め、参加者の好奇心を満たす
- 時間体験:瀞峡で過ごす時間を通じて、心を開放し、自分と向き合う時間を持ってもらう
- 人との出会い:現地で活動されている方々との出会いや、かつての暮らしに触れることで、教科書では得られない生きた体験ができる
サイトの構成と世界観
構成は閲覧者が疑似体験できるよう、トップページ中盤までツアー体験者の目線で主観的に語られています。
瀞峡に実際に訪れた私たちの感覚を研ぎ澄ませ、瀞峡に訪れる人たちには『ぜひこの感覚を覚えてほしい』というものを書き起こしています。
また全体的な世界観として、瀞峡の体験ツアーから以下のキーワードを抽出しました。
- 幽玄
- 解放
- 時
これらのキーワードから、趣のある、静かな落ち着いた時間の流れを表現するトーンを設定し、タイムレスビーングや『瀞』というコンセプトと調和した、統一感のある世界観を作り上げています。
ビジュアルデザインの特徴
デザイン面でのこだわりは、瀞峡を作ってきた長い年月や自然からインスピレーションを得たモチーフやドローイングを配置しています。
見出しなども華美な装飾は施さず、特徴的なタイポグラフィで視線を引きつける適度な違和感やコントラストをもたせています。
Credit
Produce:Takashi Iwakura(Hitonoha)
Creative Direction, Copy Writing:Makoto Hirao(ARUTEGA)
Design, Art Direction, Coding:Shizuka Tojima(ARUTEGA)
Coding:Haruna Takeda(ARUTEGA)
Wording, Editing:Masakatsu Morioka(Hitonoha)
Research:Soma Ikeyama(Hitonoha)
Photo:Yoshiki Maruyama(Freerance)