株式会社ARUTEGAの平尾です。
昨年の5月頃から進めていた広告代理店の『Remain in』さまのデザインリニューアルをARUTEGAで行いました。
この記事では、デザインリニューアルのプロセスやWebデザインを起点にどのようにARUTEGAがCIまで導くかを実際のプロジェクトを振り返りながらここに記します。
タイトルにもありますが、弊社ARUTEGAでは、無形のサービスを事業展開している企業様からご依頼いただくことが大半を占めています。
無形商材とは、例えばマーケティングやデザインやコンサルティングや翻訳などの実体が無いアウトプットをされている事業者様です。
今回はリメインインさまにおけるコーポレートブランディングのプロセスをここに記し、弊社のデザイン制作の流れを理解していただける内容になっています。
コーポレートアイデンティティを創る
ブランディングの定義
さて近年、ブランディングという言葉の認知もかなり広まり、書籍によって体系化されてきたと感じます。
平たく言うと、企業の差別化になるものです。
誰が言うかによってブランディングの定義は異なり、マーケティングの側面からは、売上成果をもってブランディングと呼ぶ場合が多いと思います。それは見た目を意味する狭義のデザインよりも事業の本質の方がよっぽど大切だからです。
ARUTEGAはデザインコンサルティングスタジオと名乗っているので、この記事ではデザインからのブランディングと定義しています。会社の戦略・方向性を決めること自体がデザインだと考えるからです。
MVV:企業ステートメントを創る
書籍さえあれば、自分達なりの解釈でブランドアイデンティティを作ることも可能と言えるのか。
理論上可能ですが、現実的にはズレると考えています。
本人たちには気づいていない理想と現実のギャップが必ずあるからです。
弊社では『MVV』やパーパスブランディングをベースの考え方とし、コーポレートブランディングの策定を行っています。
MVVとはMISSION、VISION、VALUEのことで、企業の理念、使命、価値を端的に言語化したものです。
必ずしもこの形式ではない場合もありますが、およそ同じと捉えて大丈夫かと。
企業理念や社訓と同じ類と考えてください。
ざっくり言ってしまうと、“理想の未来の状態”がVISIONで、“存在価値”がPURPOSEだと考えるとシンプルで分かりやすいです。
実にさまざまな企業ステートメントの策定方法が言われていますが、ARUTEGAではそれぞれ咀嚼していいとこ取りしてアレンジを加えたものをフォーマットとしています。自分たちでは“ブランド解体新書”と名付け、社内のナレッジとしてストックしています。
ブランド解体新書はこれからも企業トレンドに合わせてブラッシュアップしていく予定です。
コーポレートアイデンティティ事例:株式会社Remain in
それではここからは、実際にブランディングをお手伝いさせていただいた、Remain in様の例を挙げて、振り返りながらコーポレートアイデンティティの流れを見ていきます。
Remain in(リメインイン)様は東京を拠点におく、マーケ×コンサル会社です。
https://www.remain-in.com/
公開したサイトはこちらです。
現在はSNSをメインにした広告代理店業を中心にしていますが、実は子会社として事業会社を作っていくスタートアップスタジオのような会社だと思ってください。執行役員を含め、抜きんでた才能が集まったマーケティングエリート集団です。
本件のビジュアルメイクの難しさ
今回の事業内容はモノではない、無形のサービスです。
主な事業内容である、統合マーケティングとコンサルティングをビジュアルに起こさないといけません。
となると、実体がないものをデザインするのはやはり難しいです。
ARUTEGAでは無形のサービスを事業とする企業にデザインをご依頼いただくことは多いので、この悩みはいつものこと。
ですが、今回は今まで以上にどのように表現するかにとても悩み苦しみ身悶えました。
それでは、最初に企業ステートメントを決めていきます。
企業ステートメントの策定
デザインリニューアル前に、VISIONはありましたが、今回のリニューアルで一新します。
以前から掲げていた会社のメッセージ性は強く、『私達が働いた証が成果や資産となり、企業・ブランド・個人に遺る。』ということを掲げています。
つまり社名とニコイチになった堅牢なVISIONです。
これはもう、ビジョンが変わったら、社名が変わるくらいカッチカチ。
普段、私たちがご依頼いただく際には、ゼロからイチを策定する際に企業ステートメントからお手伝いすることが多いです。
つまり、何も決まっていない状態から、一緒に決めることがほとんどです。
ですが、今回はすでにあるVISIONをより強固にしていくことからはじめました。
CI:VISIONとPURPOSEとSTANCE
MVVと呼ばれるMISSION/ VISION/ VALUEを定義することが多いのですが、Remain inさまはMISSION自体がVISIONと同義でした。
それもあって、MISSIONは定義しないことにします。
現在から未来へどのような行動を示せば、VISIONを体現できるか。これをSTANCEと名付け、会社のアイデンティティとして定義することにしました。MISSIONを作らない代わりにSTANCEを定義することにします。
VISION/ PURPOSE/ STANCEの関係はこちらを見るとわかりやすいかと思います。
未来へ向け何をすればいいか、行動指針までに落とし込みます。
ワークショップで価値観のすり合わせ
ワークショップを通じて、経営メンバーの価値観それぞれが露呈するワークショップを行います。
ここではどのような言葉が飛び交っていたかを書き留め、法人格としてのキャラクターを見定めます。
ARUTEGAでは企業様の体質や課題に併せていくつかのワークショップを行います。
Remain in様の代表含める役員たち全員でカードゲームのようなワークショップを行いました。
弊社メンバーはRemain inの方々の言葉に敏感に反応して、質問を投げかけたり、ファシリテーションします。
その時、どのような言葉が頻繁に使われていたかを示すために作った分布図です。
最終的にビジョンを決める際に、矛盾がないかなどを確認するために用います。
これは最終的に行動指針を決める際のベースになるものです。
ここからブラッシュアップして会社の企業ステートメントとして覚えやすく、伝わりやすいものに変えていきます。
企業ステートメントが決まる
未来:VISIONが決まる
まずはブランドガイドラインのはじめにあるVISIONについて。
最初に決めたのはビジョンでした。
VISIONには、未来に向けてどのような姿であるべきかを掲げています。
当初より、会社の名前にもあるように、世代を超えて事業を通じて価値を遺したいという意思が、創業メンバーに強くありました。
Remain inでは、価値ある事業は永続するものだと考えています。
現在:PURPOSEが決まる
現在のRemain inの存在理由にあたります。
事業に知見資産と関係資産を残す。
わたしたちの集合知をもって世界に価値のある事業を創ろう。
その功績は受け継がれ、やがて資産は真価となる。
姿勢:STANCEが決まる
VISIONとPURPOSEが決定しました。
それではどのようにすればVISIONを叶えることができるか。
その姿勢をSTANCEと名付けました。
一人ひとりが特別で、重なり、輝き、響き合う。
最高のパートナーたちと共に働けることに、誇りを持とう。
“いい者”が“いいモノ”を残す瞬間に立ち会える。
強烈な個性を奨励し讃えるカルチャーがRemain inにはあります。
STANCEは社員たちが実際に何を考え、行動すればいいかを毎日の働き方の指標にします。
これは、会社が求める行動指針なので、評価基準に密接に関係するものでなければいけません。
今回であれば、『まぶしく働いてる?』『それってまぶしいの?』というようなコミュニケーションが、自然に社内で活発になることを願って作りました。また、短くて覚えやすいことも重要です。
表明:PROLOGUE
Remainin様を一人の人格として作り上げることで、キャラクターが出来上がります。
法人がキャラクターなら、どのような口調でどのようなコトバを話すのか。
それをARUTEGAではPROLOGUE(プロローグ)と呼んでいます。
このようなものです。
自信を持つ、堂々とした人格が脳裏に思い浮かぶはずです。
代表の山口さんには
『東京ドーム満員の社員たち向けて、自分の口から話しているのがイメージできました。これは観客席のスクリーンに投影します。』
と言っていただきました。
毎度毎度ぶっ飛んだ方ですが、本当に山口さんらしい褒め言葉だと思って、とてもうれしかったのを覚えています。
VI:ヴィジュアルアイデンティティ
紆余曲折するロゴデザイン
今回、何よりも苦しみもがいたのはロゴ制作でした。
“永続する真価”をビジュアルコンセプトにすることは難易度が高い。。
これをビジュアルにするために、当初は『岩に刻み込まれた爪痕』をイメージしてご提案しました。
どうですか、めちゃくちゃかっこよくないですか?
ロジックが通っており、デザインチーム満場一致でかなり自信があるものでした。
風化しない痕跡を遺す。。そんな強い思いを乗せた僕たちの提案。
ビジュアル的にも強くて、ロゴでありながらシンボルでもあります。
ロゴとタイポを得意とするデザイナーによって作られたものです。今見ても惚れ惚れします。
ですが、これが全くクライアント様に通らなかったのです。
正直、自分たちが納得いっており、完璧な答えが出た。
そう思っていたのですが、デザインを統括している山口さんは一向に首を縦にふりませんでした。
ここからARUTEGAは長いトンネルを潜ることになります。
ようやく決まったロゴデザインとシンボル
ここまでで最初にしたワークショップから4ヶ月が経ちました。
ARUTEGAではヒアリングに時間をかけることもあり、たくさんロゴを作って提案することはありません。
通常、ARUTEGAでは渾身の2~3パターンを提出し、ロゴが決まります。
なので、振り出しに戻り、先に提案したロゴからまずは方向性を再度作りながら合わせていきました。
方向性を固めていくためのロゴの下書きを見せ、何度もコンセプトを固めていきます。
そして、最後に決まったロゴデザインはこちらです。
ロゴにおいては何度も作っては壊しを繰り返しました。
それだけに先のVISION / PURPOSE / STANCEを体現したものになったと自負しています。
今になって、先の提案時にはコンセプトを理解しきれていなかったのだとわかります。
風化しないロゴデザインを作るにためには、それ相応の長いプロセスが必要だということがわかります。
- コンセプト
- “永続する真価” を表しています。
個人ではそのイチ因子であるが、永続して繋がることで螺旋状になり、
“DNAを継承していける”ように表現しています。
配色について、グラデーションは成長を。暖色系では決断力を。紫色系では個人のカリスマを表現し、ロゴタイプでは横長のスタイルにすることでトレンドに左右されない王道の安定感を表しています。
こちらはブランドガイドライン。
ロゴと同時にブランドガイドラインを納品し、ロゴの使い方はもちろんのこと、企業のブランディングがビジュアルから崩れていかないように、ルールを作って納品します。
DI・ダイナミックアイデンティ
いろんなシーンで見られることを想定すると、ロゴから派生させたパターンのようなものが必要だったりします。
これをダイナミックアイデンティティと呼び、ロゴとセットにビジュアルを構成するものです。
永続して繋がることで、螺旋状になり“DNAを継承していける”
多重にまぶしく重なる光: 社屋のポスター
DIを使用したステーショナリー
クレドカードです。
中には行動指針が書かれていて、“まぶしく働く”を体現するために必要な具体的な思考スタンスと行動スタンスが書かれています。
Webサイト制作
プロジェクトがスタートしてから5ヶ月が経ちました。
ここから4ヶ月ほどをかけてWebサイトを公開することになります。
最後にできたサイトはこちらです。
ロゴを制作する際に苦戦した分、サイトを作る頃には誰よりもRemain inさまが何を大切にしているかを知っている状態です。
デザインはスムーズに進み、インタラクションもしっかり盛り込んでRemain inさまらしい強いサイトになったと思います。
カルチャーデッキ
会社説明の資料として使われるカルチャーデッキです。
Remain in様では採用面接時にこれを見せたり、社員へのインナーブランディングのために制作させていただきました。
Webサイトを制作する流れで、ARUTEGAではカルチャーデッキも併せて納品する場合が、過去にもたくさんありました。
ご希望のクライアント様には納品させていただきます。
まとめ:コーポレートブランディングとデザイン
いかがだったでしょうか。
デザインの会社がするブランディングと、マーケティングの会社が行うブランディングはさまざまです。
ただいずれも、根幹の事業が魅力的であることが必須条件となります。
わたしたちはWebサイト制作を目的とせず、Webサイトを公開するまでのプロセス自体を納品し、クライアント様のアセットとなるように考えています。
ビジネスの世界ではデザインもマーケティングも上流工程になればなるほど、目的は『認知』か『売上』のどちらかを目的とすることがほとんどだと思います。どちらの両輪も回すために、ARUTEGAではWebデザインとオウンドマーケティング・ライティングの2軸でこれからもデザインコンサルティングをお手伝いしております。
ぜひお気軽にお問い合わせください。
ほなね