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ブランディングのやり方と基本ステップ

アルテガは、ブランド戦略からWebデザイン・構築までを一貫して支援する、ブランディングに強い制作パートナーです。
「伝えたいことがうまく伝わらない」「ブランドの方向性があいまい」——そんなお悩みを持つ企業さまから、日々多くのご相談をいただいています。
ブランドを“つくる”と聞くと、少し構えてしまうかもしれません。
でも実は、ブランディングは特別なことではなく、企業やサービスの“らしさ”を丁寧に言葉や形にしていくことから始まります。
この記事では、「ブランディングのやり方」について、初心者の方でも取り組みやすいように、基本ステップをわかりやすく解説します。
ブランド構築の流れや考え方、具体的な手法まで、一通りの道のりを理解していきましょう。
なぜ今、ブランディングが重要なのか
「選ばれる理由」を自分たちでつくる
「安いから」「有名だから」だけでは、選ばれ続ける理由にはならない。
そんな時代において、価格やスペック以上に価値を持つのが“ブランド”です。
似たような商品やサービスが並ぶ中で、「なんとなく好き」「信頼できそう」と感じてもらえるかどうか。
その差を生むのが、ブランディングの力です。
とはいえ、感覚やデザインだけでブランドをつくるわけではありません。
「何を軸に、どんな価値を届けるのか」という明確な戦略があってこそ、言葉やビジュアル、体験が一貫し、強いブランドになっていきます。
しかし実際には、「何から始めればいいかわからない」「やっているつもりだけど、社内に浸透していない」といった悩みも多いもの。
ブランディングに必要なのは、センスや特別な知識ではなく、正しいステップと視点です。
下記ではブランディングの“やり方”を基礎から解説しています。
ブランド構築のステップや、よくあるつまずきポイント、社内外への伝え方まで。自分たちの「らしさ」を武器に、選ばれる理由をつくるためのヒントをお伝えします。
ブランディングの基本ステップ
1. 現状の整理と課題の把握
まず取り組みたいのは、「今、どう見られているか」をきちんと把握すること。
ブランディングに取り組む前に、「そもそも自分たちはどう評価されているのか」「何が伝わっていて、何が伝わっていないのか」を知るところから始めましょう。
ここを曖昧にしたまま進めてしまうと、ズレた表現やメッセージが積み上がってしまい、かえって逆効果になってしまうこともあります。
まず社内から見える情報としては、社員の意識や、部署ごとの認識の違い。
たとえば、「うちはこういう会社だよね」という感覚が揃っていない場合、発信する言葉や行動にも一貫性が出にくくなります。
チームごとにヒアリングをしてみると、意外な気づきがあるはずです。
一方で、社外の声もとても重要です。
顧客アンケート、商談でのフィードバック、SNSのコメントや口コミなど。
そこには、今のブランドがどんな印象を与えているか、どこに期待が寄せられているかといった、リアルな評価が詰まっています。
「思っていた以上に〇〇と思われていた」「伝えたいことが全然届いていなかった」
そんな発見があるのもこのフェーズ。
逆に、自分たちでは気づいていなかった強みを、顧客が自然に受け取っているケースもあります。
こうして、社内外の声を丁寧に拾い上げ、現状を“見える化”していくことが、ブランディングの土台になります。
特に課題の整理では、「どこにズレがあるのか」「どんな誤解が生まれているのか」まで深掘りすることが大切です。
ブランドとは、相手の心に残る“体験の総体”。
その認識のギャップを埋めていくことが、次のフェーズである「らしさの設計」につながります。
焦らず、丁寧に、今の自分たちを見つめ直すところから始めていきましょう。
2. ブランドアイデンティティの設計
「私たちは何者か」を言葉で示す
ブランディングのはじまりは、ブランドの軸を言語化すること。
つまり、「私たちは何者か」「どんな価値を届けたいのか」を、誰が見てもブレずに伝わる言葉にしていくプロセスです。
ここが曖昧なままだと、発信やデザインも散漫になってしまい、「何を大切にしている会社なのか」が伝わらなくなってしまいます。
まず取り組みたいのが、ミッション・ビジョン・バリュー(MVV)の整理です。
ミッションは存在意義、ビジョンは目指す未来、バリューはその実現に向けた価値観や行動指針。
それぞれを丁寧に言語化することで、ブランドの人格や信念が明確になります。
あわせて、タグライン(印象に残る短いメッセージ)も有効です。
企業としての想いや方針を、日常会話にも使えるような短く力強い言葉に落とし込むことで、社内外の共感や浸透が生まれやすくなります。
このフェーズでは、表面的なキャッチコピーではなく、内側にある本質や思想を見つめ直すことがポイント。
経営陣だけでなく、現場メンバーや顧客からのフィードバックも参考にしながら、自社らしさを掘り下げていきましょう。
軸が定まれば、ブランドの語り口やデザイン、意思決定の基準も自然と統一されていきます。
ブランディングの成功は、この最初の「言葉の設計」にかかっていると言っても過言ではありません。
3. ペルソナを設定する
ブランドがどんなに想いを込めて発信しても、それが「誰に向けての言葉なのか」が曖昧だと、なかなか届きません。
だからこそ必要なのが、ブランドが届けたい相手像=ペルソナの設計です。
「30代女性・会社員」だけでは情報が足りません。
その人はどんな価値観を持ち、日々どんなことで悩んでいて、何に共感しやすいか。
そういった内面まで掘り下げて描くことが、ブランドと相手をつなぐコミュニケーション設計の精度を高めてくれます。
たとえば、「忙しい日々の中で、自分らしさを大切にしたいと思っているけれど、少し後回しにしがちな人」といったように、ライフスタイルや気持ちの動きまで含めて具体化していきましょう。
このステップは、マーケティングだけのものではありません。
ブランドコンセプトの表現方法や、トーン&マナー、ビジュアルデザインにまで影響します。
「この人なら、こういう言葉が刺さりそう」「こんな世界観なら共感されそう」など、施策の方向性も自然と見えてくるようになります。
注意したいのは、“作りすぎない”こと。
現実から遠く離れた理想像を描いても意味がありません。
実際の顧客やファン、社内にいる「応援してくれる人たち」の傾向を分析し、その延長線上でリアルなペルソナを描くことが大切です。
ペルソナを持つことで、ブランドの言葉や振る舞いが定まり、共感してくれる人たちに届きやすくなります。
まるで会話をするように、伝えたい相手のことを考えながら設計する。それが、ブランディングの温度感を高めていく近道です。
4. ブランドコンセプトをつくる
伝えたい世界観を、ひとことで言えるようにする。
ブランドには「らしさ」があります。
でも、そのらしさを他者に伝えるのは意外とむずかしいもの。
だからこそ、ブランドのコンセプトをシンプルな言葉に落とし込むことが大切です。
ブランドコンセプトは、いわば“旗印”のようなもの。
その言葉があることで、発信や制作の場面でも「私たちらしい選択とは何か?」を判断しやすくなります。
たとえば、「日々にちいさな余白を届ける」といったコンセプトがあれば、使う言葉や写真のトーン、サービスの案内の仕方まで、自然と整っていく。
判断に迷ったときの拠りどころになる、そんな存在です。
この言葉は、長い説明である必要はありません。
むしろ、短く直感的であることが大切です。
一文で世界観がふわっと伝わる。そんなコンセプトが理想です。
言葉にするプロセスでは、抽象的な表現をただ並べるだけでなく、具体と抽象を行き来しながら、「そのブランドらしさ」がにじむ言葉を探ります。
ターゲットが感じ取れるような温度感で、かつチーム内でも共有・共感しやすいものに整えていきましょう。
ブランドは、伝えたい世界をつくっていく活動。
その出発点となるコンセプトが定まると、すべての表現が芯を持ち、統一感が生まれていきます。
ブレずに育てていくためにも、この段階でじっくりと向き合いたいパートです。
5. ポジショニングを明確にする
ブランドをつくっていくうえで欠かせないのがポジショニングの視点。
「似たようなサービスや商品がたくさんある中で、なぜ私たちが選ばれるのか?」この問いに答えられることが、ブランドとしての強みになります。
そのためにはまず、競合の特徴やターゲット、提供価値をしっかりと把握することがスタートライン。
市場の中で自分たちがどの位置にいるのかを客観的に見ることが大切です。
そして、「誰にとって」「どんな価値がある存在なのか」を言語化します。
たとえば、「忙しい人に、考えずに使えるシンプルな体験を」なのか、「こだわりのある人に、深く寄り添う専門性を」なのか。
その定義が、ポジショニングの核となります。
このポジションが曖昧なままだと、あらゆる場面で迷いが生まれます。
発信もデザインもターゲットもぼやけてしまい、結果として選ばれにくいブランドになってしまう。
逆に明確なポジショニングがあれば、比較の中でも「ここに頼みたい」と思ってもらえる。
違いがあるから、意味がある。その意味をつくる作業こそが、ブランド戦略の要とも言えるでしょう。
そしてこれは、「他と比べてどこが優れているか?」という単純な話ではありません。
どんな価値観や想いを持っているか、どんな人の課題にどんな視点で応えるのか。
その姿勢に共感が生まれたとき、選ばれる理由が強くなるのです。
ブランドを「らしく」育てるためにも、まずは市場の中での立ち位置を見極め、しっかりと輪郭を描いていきましょう。
https://arutega.jp/knowledge/branding-framework/
表現と体験に落とし込む
デザインとコピーの一貫性
ロゴやカラーだけでブランドを語るのは、ほんの一部の要素にすぎません。
ブランドの印象をかたちづくるのは、目に見えるもの・見えないものを含めた“体験”のトータル設計です。
たとえば、Webサイトに使われているフォントの雰囲気、コピーの言葉づかい、スタッフ写真の表情や撮り方、問い合わせページの導線のトーン……。細かいようで、すべてがブランドの一部になっていきます。
人は、言葉やビジュアルの「ちぐはぐさ」に敏感です。
優しそうな雰囲気を出しているのに、問い合わせボタンの文言が命令口調だったり、ロゴは柔らかいのに写真が硬すぎたりすると、無意識に違和感を覚えてしまうもの。
だからこそ、デザインとコピー、体験のトーンをひとつのブランドコンセプトに沿って統一していくことが大切になります。
この「一貫性」があると、初めて出会った人にも「なんか好き」「信頼できそう」と感じてもらえる確率がぐっと上がる。
さらに繰り返し接することで、「あのブランドだ」と記憶に残り、“覚えられるブランド”として認識されるようになります。
そしてこれは、表現を作る人たちの判断基準にもなります。
「この言葉はうちっぽいか?」「このビジュアルはズレてないか?」と確認できる軸があれば、発信の精度もどんどん高まっていく。
見た目を整えるだけでは伝わらない、でも“伝わる見た目”はつくれる。
その鍵は、言葉とデザインの両方をブランドの視点で考えることにあります。
ブランドコミュニケーション戦略
ブランドがユーザーと出会う場所は、SNSやWebサイト、広告、営業資料、イベントなど実にさまざま。
それぞれの接点が、どんな役割を持っているかを整理できているかどうかが、ブランディングの精度を大きく左右します。
たとえばSNSは、日常や想いを伝える場所。
気軽で親しみやすい投稿が向いている。一方で、営業資料やWebサイトは、信頼感や専門性を伝える役割が強くなります。
すべてを同じテンションで語る必要はないけれど、世界観やトーンの「軸」はぶらさないことが大切です。
よくあるのが、「Webサイトはすごく丁寧なのに、SNSではまったく別キャラ」になってしまっているケース。
これはユーザーにとって“どれが本当?”という迷いを生んでしまいます。
接点ごとに伝えたいことやストーリーを分けつつも、使う言葉や写真の雰囲気、色づかいなどをブランドとして統一しておくと、「この会社っぽいね」と自然に認識してもらえるようになります。
また、それぞれのチャネルにおける役割を明確にすることで、運用の目的もクリアに。
SNSは共感を育てる、Webサイトは信頼を積み上げる、広告はきっかけをつくる。
そんなふうに分担を持たせると、コンテンツ設計や発信内容のブレも減っていきます。
ブランドの語り口を接点ごとに整えることは、信頼の積み重ねそのもの。
ユーザーがどのタッチポイントに触れても、「らしさ」が感じられる状態を目指しましょう。
インナーブランディングの重要性
いくら外に向けて発信していても、社内がバラバラだとブランドは定着しません。
社員一人ひとりがブランドの担い手であるという意識を持つことで、ようやく“企業全体で語るブランド”になっていきます。
そのためにまず必要なのが、ブランドの軸や価値観を共有できる仕組み。
ブランドブックの整備や、キーメッセージ・ビジュアルの社内掲示、定期的なワークショップなどが有効です。
目指すのは、どの部署にいても「うちのブランドってこういうもの」と自然に語れる状態。
また、ブランディングは広報やマーケティング部門だけの仕事ではありません。
営業やカスタマーサポート、開発、バックオフィスなど、あらゆる部署での“ふるまい”がブランド体験になります。
つまり、社内の誰か一人でも「ブランドとは関係ない」と思っていたら、そこで一貫性は崩れてしまいます。
社員が自分の言葉でブランドを説明できるようになると、社外のステークホルダーとのやり取りもスムーズに。
発言のトーンや、提案の仕方にも自然とブランドらしさがにじみ出てきます。
インナーブランディングは、ブランドの魂を社内に宿らせるプロセス。
採用、定着率、エンゲージメントにも好影響を与えるため、長期的な組織づくりにとっても重要な要素です。
ブランドを「誰かが作ったもの」ではなく、「自分たちが育てているもの」と感じられる状態を、社内で目指していきましょう。
KPIと評価指標の設計
ブランディングの成果はどう測る?
ブランディングは「見えづらい」「効果が測れない」と言われることが多いですが、実は工夫次第でしっかりと成果を追うことができます。
ポイントは、明確なKPI(重要業績評価指標)を設定し、ブランドの浸透度や成長を数値として捉えること。
たとえば、「ブランド想起率」は、顧客が何かを必要としたときに、真っ先に思い浮かべるブランドでいられるかを測る指標。
これは市場調査や顧客アンケートで確認できます。
また、「Webからの指名検索数」や「SNSでのブランド言及数」なども、ブランドの浸透具合を可視化するのに有効なKPIです。
他にも、ロイヤルカスタマーの割合、リピート購入率、採用応募者の志望動機に「ブランド」が含まれているかどうかなど、ブランドの影響はあらゆる接点で現れます。
定量的に見ることで、ブランディングのどこが効いているか、どこに伸びしろがあるかが見えてくる。
すると、改善の方向性が定まり、チーム全体の視点もそろいやすくなります。
ブランドは「感覚」だけで動かすと、属人的になったり判断が曖昧になったりしがちです。
だからこそ、数字と感覚の両輪で見る視点が欠かせません。
「うまくいっている気がする」ではなく、「ここが育ってきた」と言える状態へ。
そんなブランディングの運用体制をつくっていきましょう。
https://arutega.jp/knowledge/branding-benefits/
まとめ
ブランディングは、企業の「らしさ」を見つけ、それを一貫して伝え続けること。
単にデザインを整えるだけではなく、言葉や行動、ユーザー体験のすべてに“らしさ”を込めていく。その積み重ねが、共感や信頼を生み、選ばれる理由になっていきます。
けれど、設計しただけでは意味がありません。
どんなに美しいコンセプトがあっても、それが体験として届かなければ、ブランドはただの自己満足で終わってしまいます。
だからこそ、伝えるだけでなく「どう感じてもらうか」まで含めて考えていくことが大切です。
ブランドが届けたいメッセージは、Webサイトのコピーや、SNSの投稿、広告のデザイン、接客時の一言など、あらゆる接点で“にじみ出る”ように設計されるべきもの。
そうして、どのタッチポイントでも一貫して「らしさ」が感じられるようになれば、ブランドはじわじわと育ち、やがて強い存在感を持つようになります。
想いや価値を、ちゃんと伝える。
そのための言葉を選び、体験を設計し、チーム全体で届けていく。
ブランディングとは、企業の“本質”をかたちにして、社会とつながるための活動そのものです。
アルテガは、ブランドの芯を見つけるところから、一緒に考え、伝え方まで伴走しています。
伝わっていない違和感があるときこそ、ブランディングを見直すチャンスかもしれません。